WGT EXTRA11 クルド料理

★WGT-EXTRA第12回【クルド料理】

●地域名:クルディスタン【庫爾德斯坦】
　(旗はイラク領クルディスタン地域（クルド人自治区）の地域政府旗)

●幹　事:善恵姉

●実施日:会員向け日程調整メールをご参照願います。

WGT(World Gourmet Tour in Japan)会員各位

　善恵です。
　今回はWGT-EXTRAとして、国家を持たないため本割ではお目見えしないクルド人の料理を楽しむ企画を立ててみました。

　クルド人は世界最大の少数民族集団です。人口は3000万人以上。宗教はイスラム教で独自言語クルド語を持ちます。主にトルコ南東部やイラク北部、イラン、シリアといった中東の国々にいて、一部は旧ソ連域にも。
　元々はオスマントルコ領内のクルディスタンだったのですが、第一次世界大戦でオスマン帝国が負けたことから連座の憂き目に遭い、戦勝国に引かれた線により多数の国に分割されてしまいました。
　アイスランドなど人口数十万人の国もあるのに、この人口でなぜ独立国でないのか不思議だったのですが、このような事情だったわけですね。
　分割されたことで、それぞれの国で少数民族となり、場合により制限や弾圧を受けることになりました。それに反発して独立運動が起こります。特にトルコでは20世紀末クルド側組織と政府の武力対立で難民が発生。
　難民としてのクルド人は西欧に200万人以上、旧ソ連域に50万人いるそうです。

　日本クルド文化協会によれば、在日クルド人は2000人ほど。
　主としてトルコからの難民で、他にイラン、イラク、シリア国籍の人も。多くは埼玉南部に住み、蕨市付近に1300人が集中しています。二世も誕生し、ワラビスタンと呼称されているとか。
　そして、名前や祭りなど自国で制限されるクルド文化を自由に表現しているとのことです。くだんの協会（川口市）では文化イベントや料理教室も行われていています。

　そんな中2017年にクルド料理レストランができていました。
　店の名前は「メソポタミア」。クルド手芸のお店もかねています。
　案内にはこのようにあります。
　「レストラン・メソポタミアは、クルド料理の店です。チグリスとユーフラテス川に挟まれた地域を、ギリシャ人はメソポタミアと呼びました。その上流の山岳地帯にクルド人は数千年前から住み、シュメール、ペルシャ、アラブそしてトルコの影響を受けた独自の文化を育んできました。在日クルド人のファーティマさんが家庭料理を提供し、伝統的な手芸作品を販売、希望者には作り方を教えるため「メソポタミア」を開店しました。」

　大勢のご参加お待ちしています

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　店舗:クルド料理　メソポタミア
　住所:東京都北区上十条1-11-8 3階
　電話:03-5948-8649
　地図:https://tabelog.com/tokyo/A1323/A132304/13212001/dtlmap/
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　久しぶりのWGT-EXTRAです。
　善恵姉による企画はクルド料理！
　いやぁ、攻めますねぇ。案内文に記されていませんが、クルド料理の何処にビビッとこられたのでしょう？　会食時に思いを語っていただきましょう。

　実は本企画の会場となるこの店の存在は、主宰も気になっていました。
　しかし、国家の料理をカバーしているわけではないので…と、あまり実現性を感じていなかったのです。
　なるほど気になっているくらいならEXTRAでやっちゃえば良かったのですね。言われてみれば至極簡単なことでした。
　改めて企画に敬意を表しつつ、主宰がビビッときていた点を挙げると、それは店名！
　「クルド料理」というキーワードもそれはそれで惹かれるのですが、店名「メソポタミア」はその上を行きます。
　つまり、古代四大文明の一角の料理、紀元前8000年以前から連綿と続いてきたかもしれない食事に触れることができるのだ！というロマンが滅茶苦茶魅力的なスパイスとして香ってくるからです。
　実際そういうメニューが並ぶのかは関係なく、想像するだけでとても楽しみです。

　また、企画をいただいた後、基礎知識を掘り起こしてみると、皆さんも世界史で学ばれたであろう通り、メソポタミアが栄えた地はチグリス/ユーフラテス川沿岸であり、その２大河は現在の地理でトルコに発しシリアを経由しイラクでペルシャ湾に注ぐと分かります。当然主宰としては、「おっ？実は未だ実施が叶っていないWGTイラクが成立するのでは？」と色気が出てくるわけです。加えて、メソポタミア文明の初期を彩っていた勢力シュメール、バビロニア、アッシリアなどは皆現イラクに拠点があり、益々イラクの回の実現に期待が！
　こうしたことに気が付いて、そして、たまたま幹事殿が本割でも担当タイミングでもありましたので、「EXTRAではなくWGTイラクとしてやったらいかがですか？」という提案をさせていただきました。
　しかし、幹事殿の回答は「否」。
　「確かにクルド人はイラクにも分布しているけど、メインはトルコだし、血筋的にはイラン系山岳民族だし、拡大解釈はあるまじき！ EXTRAでやります！」とピシャリ。主宰でありながら、自分の過去企画分も含め、これまでいくつかの妥協を容認してきた身としては目を覚まさせられる思いでした。(幹事殿の名誉のために言っておくと、そんなに厳しくたしなめられたわけではありません。大袈裟に書いているだけです。)
　冷静に考えれば、クルド人の経営している店で反発しているイラク料理の回をやるのも失礼な話。アイデンティティを否定するような設定は如何なものか？と気を遣うところかもですね(イエメンの回で実質イスラエル料理やったり、イスラエルの回でパレスチナ料理をやったりした実績はありますが…)。
　ということで、WGTイラクが実現する日はいつのことやら…に戻ってしまいましたが、まぁ気長に待ちましょう。

　それはさておいて、どうやら幹事殿の関心は「メソポタミア」より「クルド」にありそうです。
　確かにクルド人問題は、日々他人事のようにしか聞いていないものの、ニュースやドキュメンタリー番組で散見する政治問題です。
　欧米列強に翻弄された代表的な民族はユダヤ人が有名ですが、幹事殿の案内文にある通り、クルド人も似たような歴史を有します。
　人口が多いこともあるからか、なまじ力があって現状所属する政府に対して反発したり独立しようとしたりするため、迫害を受けることになるのですね。耐えかねて難民となる人もいるのですが、それも数が馬鹿にならすして今度は社会問題を引き起こします。
　それでもクルド人はめげず、イランのコルデスターン州、イラクとシリアのクルド人自治区、その他トルコの居住区と連合して大クルディスタンを作る構想もあるとかないとか。しばらくはきな臭い状況が続きそうです。
　欧米が責任とって、どこかに土地与えて国を作らせたら良いのでは？という考えもありましょうが、イスラエルvsアラブ・パレスチナの二の舞を演じようというのか！と反論されると慎重にならざるを得ません。
　その文化もきっと特徴的なことがあるのだろうと思いますが、世の中のサイトは政治状況を背景とした内容がほとんど。今回の開催環境であるレストランが併設している手芸教室の案内の中で工芸品や民族衣装を確認できるのが一番情報量が多い気も。
　国を持たないというのはこういうことなのかしら？　それだけ日本が関心を示していない現れなのでしょうか？　クルドを知る良い機会と捉えたいと思います。　

　さてクルド料理についてですが、HPを見てみると、いわゆる中東料理です。
　料理・食材分類せず並べると、ケバブ、ピラフ、ヨーグルト、ナス、トマト、ひき肉、レンズマメ…とWGTでは馴染みあるものが挙がります。
　ただ店のメニューには押しなべて「クルド風」の修飾が施されており、これが如何なる特徴なのかが気になるところ。
　ネット上でも定かにならなかったのですが、前述の通り、人口も多く広大な地域に散っているため、クルド料理とひとくくりには定義しづらいのかもしれません。会食時に店の方に聞いてみましょうかね。
　在日クルド人の状況も把握して、見識も深めたいと思います。

　食を楽しみ、文化を楽しむ。日本にいながら世界旅行。
　文化を食して、異国の空気を感じましょう。
　美食に幸あれ！

WGT事務局 Tosh

★参加表明返信はこちらからどうぞ

★WGT-EXTRA12【クルド料理】実施報告

●実施日:2019/06/15(土)

●参加者:4名(幹事:善恵姉)

　黄河文明、インダス文明、エジプト文明と平らげてきましたが、今回古代四大文明最後の砦を崩してきました！
　なんて大袈裟に記すほど極めたわけでもありませんが、幹事善恵姉のEXTRA企画にてメソポタミアの地に降り立つことに成功。クルド料理として堪能しました。

　早速クルド料理の振り返りからです。
　予め言っておくと、実はちょっと失敗がありました。メソポタミア料理とはなんぞや？クルド料理とはなんぞや？という視点の深掘りをすっかり忘れていたということ。
　店の方と会話するチャンスに恵まれたにも関わらず、そして「いつも私たちが食べているものです」という台詞を聞いたにも関わらず、さらに事前準備をしていたにも関わらず、トルコ料理との違い(あるいは他の中東料理との違い)や古代文明からの継承の有無など、突っ込んだ確認を失念してしまいました。
　とは言え、今回は幹事殿・主宰を凌駕してH姉が予習共々メニュー選択を熱っぽくリードしてくれましたので、それはそれで良かった状況もありました。
　ということで、そんな中から後付けで調べた内容踏まえて、特徴的だった料理、個性がありそうな料理を抜粋してみましょう。

クフタビイチ

ラハマージュン

　筆頭はけったいな形状の料理から。その名もクフタビイチ。牛挽肉団子のブルグル包み揚げです。
　ブルグルとはなんぞやについては別項で後述するとして、まず名称について調べると、世界的にはクッバ(アラビア語)とかキッベ(英語)とかの方がメジャーなようです。HPにあったクフタビイチ(トルコ語？)のクフタは中東ミートボールの意として、ビ・イチは…詰め物の意味？よく分からず仕舞い。他方店内メニューの表記にはKutilk(クルド語？)とあります。言語ごとの違いだけかもしれませんが、様々な表現がなされるということから、馴染み深い存在なのだとの察しがつきます。実際クルド料理を検索するとほぼ登場してくる料理。反面中東中心に食されてはいるものの、「レバノン料理としてメジャー」と整理されているのですけどね。
　料理自体を調べてみると、楕円形の形状が印象的。そもそもクッバがアラビア語で「球」の意味。丸じゃ無いんだ…とは思いますけど。ただ楕円は楕円で蘊蓄があって、レバノンも含まれる"歴史的シリア"の呼び名を冠して「シリアの魚雷」の異名を持つとか。かといってレバノンでは、平たいコロッケみたいなものもあれば、大皿にオーブンで焼いたものもあれば、生肉を利用したタルタルステーキタイプもあれば、揚げたものもあるという具合。皆クッバと呼ばれます。前述クフタ・ビ・イチはそうしたタイプの差を埋める名称なのかもしれません。
　味については、香辛料や食材による独特な臭みも無く、それが良いのか悪いのか逆に見た目以上の存在感を意識しないまま食しました。
　因みに、WGTレバノンの回のレポートを確認したところ、ケッベとして実食済だったようです。思い出せなかった…情けないorz。

　次行きましょう。
　店の方にお薦めは？と聞いたところ返ってきたのがラハマージュン。グーグル先生に問い合わせると、ラフマージュンと発音修正されます。
　メニューには「羊挽肉のせナン」とありましたが、出自を察することのできる料理名を探るとトルコ・ビザ、あるいはアルメニア・ピザと言い換えられます。ただし、歴史を辿ると「トルコ、アルメニア、シリア、レバノン、そしてイラクでポピュラー」「トルコでは東部から全国に伝播された」など、例外もありますがクルディスタンど真ん中で食べられた料理！クルド料理としてのプレゼンスが高まります。
　トルコの似た料理としてはギョズレメを思い出しますが、これはチーズとほうれん草のクレープと説明されます。どちらも薄い生地なので、具に使われる食材だけの違いなのかと思ったのですが、どうやら生地に使われる粉も多少違うようです(ラフマージュンは片栗粉か強力粉を使用、ギョズレメは薄力粉と強力粉を使用)。食べる方に区別はつきませんやね。
　この手の料理は何処で食べても何を食べても美味。中東料理のメゼ(前菜)で食されるピタパンもそうですが、生地と具材のバランスが合えば、無類の美味しさを誇る総菜パンとなります。この日も余計な野菜が入らなかった分、シンプルな家庭料理の様相も呈して良いスナックとなりました。

サワル

クスル

　穀物はブルグルと呼ばれる中東料理でよく使われる麦が多く食される模様。本回では2つの料理を注文しました。
　一品目はサワルと呼ばれる具無しのブルグルピラフ。
　いやぁ、これがシンプルながら美味でした。バター系調味料の香りが仄かに通い、いくらでも食べられそうでした。世の中のレシピを確認するとトマトペースを加えるようなので赤くなるのですが、今回は足されない形で提供されます。
　本来この手の料理はスープと混ぜて食すことが多いので、一緒に頼んでいたポテトヤニ(ジャガイモのスープ)を合わせた方が…なんて参加メンバーに勧めてもみましたが、そのままが良かったと感じたものです。

　二品目はクスルと呼ばれる野菜のクスクスピラフ。
　クスクスと言いながら、これもブルグルから作られます。こちらはトマトペーストが足されて赤くなります。オリーブやレモンジュースなど酸味が強い即在が加えられているためか爽やかな風味も。レタスが使われるのもお約束で食感を楽しませてくれました。ピラフとされているので一品料理と見るところですが、世の中の情報では「常温で提供される」とわざわざ言及されています。さらには「サイドディッシュか前菜で提供される」とも。あくまでも脇役ステータスなんですね。
　ただ、個人的にはクスクスはやはりマグリブ地域の方が美味しいと感じました。特にこの料理に思い入れがあるわけでもないのですが、クスクスには食感と具材の調和に一家言あって、その理想は整理できていないのですが、今回も楽しく美味しく満足して食したものの、気持ち納得感が得られなかったわけです。

　両メニューとも中東地域で食されるものの、クルド料理として紹介するサイトもいくつかあって、クルド人のソールフードステータスを感じさせていただきました。

　中東料理はメゼ(前菜)が充実するのでメインに来るまでのお腹一杯になってしまうのですが、そちらを触れないわけにはいきません。
　ということで、キーマケバブに白羽の矢を立てます。
　再確認を省略していますが、H姉調べによると「クルドのケバブは串刺しにしないパターンが主流」とのこと。それゆえの選択です。メニューには串刺しケバブもありましたけどね。
　セットメニューとして提供されていましたが、ここに至るまでにいい加減多くの料理をこなした後だったので、付け合わせをカットしてケバブだけ注文します。でも流石にそれだけでは殺風景だと思ったのかナンだけは付いてきました(笑)。何を隠そう、これは良い判断をいただきました。そのまま食べるのも良かったのですが、ナンでくるりと巻いてケバブサンドにして食べるとさらに良い感じ。全然メイン料理ぽくない食べ方になってしまうのですが、正直言って中東料理は、肉でも煮込みでもピタパンやナンなどに挟んで食べるのが絶品。シャワルマに代表されるように中東は密かにサンドイッチ優良エリアだと思っています。

左上から時計回りに
クラビエ,レワニ,バクラワ
クルド蜂蜜ヨーグルト

メソポタミアコーヒー
(ピスタチオコーヒー)
カップホルダーがお洒落

　ついでにデザートも。
　4種全て注文しました。どれも甘～い！
　ポイントだけピックアップすると、バグラワはトルコの超メジャーなペイストリー。クルド人もお気に入りのようです。
　その出自は不明なものの、10世紀のバグダッドでは同様のレシピで作られたものがあるようなので、もしかするとクルド人が創始している可能性も有りや無しや。
　ヨーグルトは普通でしたが、クルド天然蜂蜜添えとありました。
　クルドで調べると上手くヒットしないのですが、トルコは世界有数の蜂蜜生産国。中国に大きく水を空けられているものの、2016年度世界第2位。世界一高価なエルビッシュと呼ばれる蜂蜜が採れた記録が残るのもトルコ東北部。2009年に１kg540万円の値が付いたそうです＼(^o^)／。クルディスタン地域からはちょっと外れるのですが、近くで生産されていることから、クルド人にとっても馴染みがあるのだろうと察します。「クルド天然蜂蜜」をありがたく感じてきました。

　コーヒーも挙げねばなりません。というかコーヒーじゃないですけどね。
　メソポタミアコーヒーの名で登場した飲み物を構成するのは、コーヒー豆ではなくピスタチオ。風味も当然ピスタチオ。カフェインが無いので…なんてコマーシャルはキャッチーですが、コーヒーと言われると…。これとは別にクルドコーヒーの名で、ピスタチオ50%・コーヒー豆50%の飲み物もありましたが、これもピスタチオの風味が勝ってしまってスパイスが入っていなければ違いが分からないほどでした(笑)。
　因みにトルコはピスタチオの生産国でもあり、2018年度世界第3位。国内生産50%を超えるシャンルウルファ県はクルディスタン地域に属します。クルド人にとっては、コーヒーよりピスタチオ！有り余るピスタチオでコーヒーと同じことをしてみむと思っても不思議はないと言えましょう。
　もう一つ気になったのはカップホルダー。銀製の細密工芸が目を引きました。むしろ飲み物より関心が。
　こちらもクルディスタンが銀産出地域であり、例えばマルディン県のミディヤットという町では今でも銀細工が盛んとのこと。そもそもメソポタミア文明期から作られていたんですと。何気なく良いなぁと思ったわけですが、只者でなかったようです。

　会食時には判然としなかったクルド料理らしさでしたが、それなりに特色が際立ったでしょうか？
　実は半分ほどしか掲載していません。デザート含めて16品とWGT史上最多タイの皿数を腹に収めたためですが、それでも腹八分目で終わったのが不思議でした。
　トルコ料理との差異の整理は微妙だったものの、クルド地域で食べられる料理を感じられたことは良かったです。トルコ全土に影響を与えた側面も感じられ、世界三大料理の一角を形成するトルコ料理の一部だと再認識すると、クルド料理って何？なんて言っている場合でもないことに気づきます。
　良い食体験をさせていただきました。

　開催案内時点から多少深堀した内容で、クルドのなんたるかについてもトークしました。
　気になったのは、世の中のニュースではクルド人が虐げられているという点にフォーカスされているため、可哀想に…なんて他人事コメントくらいは持っていたものの、必ずしも一方的に同情すべき側面ばかりでもなさそうだったこと。
　確かに、トルコが単一民族政策を取ったことが発端で、それだけ見れば同情的なのですが、その解決についてはクルド人ももう少しやりようがあるのでは？と思う感想もあったわけです。
　例えば、当初中東諸国から差別を受けた際に欧米の支援を受けたにも関わらず、そちらに抱きつかず、アルカイダやIS(イスラム国)対抗として、所属する国の政府と共闘する姿勢を示すとか、あるいは強行勢力がテロ行為で自分たちの主張を通そうとするとか、これはクルド人単独問題ですが、改宗しようとした娘を家族がリンチするような非人道的風習が残っているとか、欧米が嫌うような行動にいたるため引かれてしまっているように思います。
　他方トルコでは議席を増やし、イラクではフセイン死後にクルド系政党から大統領を輩出し、シリアではIS対応で政府と呉越同舟化など、アイデンティティを確保しやすい状況も形成され、正々堂々と主張する環境も作っているのですけどね。
　いずれにしても、21世紀型で平和裏に解決さることを願うばかり…というか、日本あるいは日本人がどう関わっていけるのかということに意識を高めたいところですね。

ネウロズ祭2018
埼玉県さいたま市秋ヶ瀬公園

　文化的にはネウロズとかネヴロズとか呼ばれるクルドの新年祭を挙げられるかと思います。
　ネットのあちこちでクルドのとても重要な祭りと説明されていたので、会食時には埼玉県で行われる在日クルド人のイベントの様子をご紹介させていただきました。
　しかし！このレポートをまとめる段になり再確認すると、なんとこの祭りクルド人のものではなくイラン発祥なのだそうです。ペルシャ語でノウルーズと発音し、ノウ「新しい」、ルーズ「日」の意味、すなわちイラン歴の元日とのこと。現代日本人が認知するところの春分の日に当たり、ペルシャでは「暖かくなってきたので、そろそろ種でも撒き始めるか…」って日が元日に設定されているのですね。その起源は紀元前6世紀以前からあったゾロアスター教の祝祭に端を発するのだとか。もう、クルド人がどうのこうののレベルではありません！
　それでもクルド人にとって重要であることには変わりがないので、気を取り直して埼玉開催の祭りに戻ると、動画サイトで見る限り、やはりクルド人問題を背景に政治的な様相も呈します。見かけは民族衣装で着飾ってラインダンスに興じるのですが、クルド人の現況を憂いての演説がなされたり、世界各地の祭りを取り上げ民族団結が強調されるなど、ちょっと毛色の変わったイベントでした。
　それが無くても、「ノウルーズの書」という作法がまとめられた書物があって、王朝の統制儀礼と連動していた様子。その縁起、その展開、アイテムの解説などがなされています。「美しい顔の特性について」という章もあって、新年に美しいものを見ると縁起が良いのだそうです。面白く思います。日本の正月だって様々な作法があるのでびっくりすることもありませんが、文化の比較してみるのも一興かと思いました。
　以下が勉強になりそうです。興味がある方はリンクが切れるまでご覧ください。
　「ノウルーズの書」 - 東アジア人文情報学研究センター - 京都大学
　http://www.kita.zinbun.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2011/10/nawruz.pdf

　日本との関係も整理しておきましょう。
　不可思議に思ったのは、このネウロズ、クルド人しか参加していないように見えました。
　何か変なの？という意見もありましょうが、日本国内で開催される多くの外国系祭りでは日本人も入り乱れて参加しているケースが当たり前に存在しています。ネウロズに関するブログを見れば、確かに日本人が現地に行っている記事もあるのですが、あくまでも見学・遠巻きの観覧に終始することが多そう。たまたまでしたでしょうか？
　地域の商店街に喋らせれば、「クルド人が住んでいることにストレスは無いものの、交流があるわけでもない」と冷ややかなコメント。
　難民として来日後、日本で生まれた子供もいるそうですが、学校に行けばやはりいじめられることもあるようです。
　不法滞在になっている人が多数いる状況が近づきがたい存在にしてしまっているのでしょうか？
　日本政府が難民受入をしていないため、不法滞在者は逮捕し強制送還するのが一義的ですが、紛争状態の本国に送り返すわけにもいかず、拘置所もいつまでも留置しておくわけにもいかず、かといって、新日なトルコ政府に是正を促すわけにもいかず、開き直って何か援助をしているかと言えばそんなこともなされず…というデッドロック状態。
　どうあるべきなのしょうね？
　偶然でしたが、WGT開催後に『バリバイ一家の願い～“クルド難民”家族の１２年～』というドキュメンタリー番組を見る機会に恵まれました。
　難民側の「難民を受け入れないなら、始めから入国許可すべきでない！」という言葉が耳に残ります。
　他方日本側の言い分は、クルド人が日本に来る理由の一つに、トルコと日本の友好関係からVISAが免除されていることが挙げられ、イミグレーションでは観光目的か緊急避難か分からないでしょうだとか、不法滞在を見て見ぬふりしているだけありがたいと思ってほしいだとかなのでしょうね。
　取材陣の「どうするつもり？」の問いかけにも当局はのらりくらり。日本側の事情も分かるので、番組を見ながら解決策が想像できずもやもやしながら見ていました。
　せめていじめなんかは止めてほしいと思うし、もう少し優しく接してあげても…なんてのは、事情に疎い外野のセリフだと怒られちゃうでしょうか。

　本回はクルド料理メソポタミアで開催されました。
　ワラビスタンがある埼玉ではなく、東京都北区十条の駅前にドンとあります。
　内部のインテリアは中東の景色が感じられるデザインではありつつ、よく見るとクルドに拘った内容だと分かります。クルドに関わる書籍も並べられており、民族愛が感じられました。
　皆が皆でもありませんでしたが、日本語を流暢に話す店員さんもいて上手く回っている感じもすれば、後半は在日クルド人が夕食を食べにやってきて、地元民用の情報共有の場であり、憩いの場、食卓なのだろうと察せられました。
　上述のこともあり、「生活たいへんですか？」と問うてみたところ、「そんなことはない」との回答。命の危険があるトルコに戻るよりは…という相対的なコメントではなく、心安さを保っているように思いました。とはいえ、世が世であれば強制送還されるべきステータスの方もいらっしゃるのでしょうから、モヤモヤは払拭しないのだろうとも思いますけどね。
　そんな空気を感じられるのもこの店の特徴だったと言えましょう。

　EXTRA開催だというのに長々と書いてしまいました。
　それだけ関心が向き、興味深かったということです。
　H姉がボソッと言われたように、まずは関心を持つことからでも始めねばということなのだろうと思います。
　国を持たない民の気持ちに寄り添ってみた暁に見えてくるものはなんなのでしょう…。

WGT主宰 Tosh

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